やさしい耳鼻咽喉科講座

声帯ポリープ

声帯ポリープとは

声帯が振動する場所に膨らみができ、声が悪くなります。脹れは限局しており、ほとんどが片側だけですが、期間が長かったり、程度が強くなりますと、反対側にも変化があらわれます。

原因

はじめに声の酷使や炎症により声帯粘膜の充血がおこります。こういう状態で大声を出すなどの声帯の激しい機械的刺激が加わると声帯粘膜下の血管が破れて血腫(ちまめ)が声帯にでき、声帯粘膜が膨れてきます。これが何度も繰り返されるとポリープになると考えられています。この疾患は無理な発声方法で声を出したり、歌ったりすることによって発症にいたります。また、喫煙によって出来る場合もあります。

症状

嗄声(声がかれる)が主症状です。声の質は、空気がもれる感じで、やや低音になります。声が途中で止まってしまうこともあります。声を出すときに疲れを感じる場合もあり、非常に稀なケースですが、かなり大きなものになると、呼吸困難を起すこともあります。男性に比較的多くみられる傾向があります。

診断

声を聞けばだいたい予想は付きますが、視診(見ること)が基本です。診断には喉頭内視鏡検査が有用です。硬性鏡と軟性鏡がありますが一長一短があります。

ストロボスコ―プという声帯のうごきを観察できる器械を使用しますと粘膜波動がきれいに観察できて診断に非常に有用です。ストロボスコ―プのある施設は限られていますので、かかりつけ医にご相談ください。

治療

まずは声の衛生です。声の酷使が原因ですので、保存療法・手術療法のいずれを選択するにしても声の出し方が悪いと、治らないか再発しやすいと言えます。

新鮮例(発生したばかり)では、まず保存療法が行われます。沈黙により声帯を安静にして、無用の刺激を避けます。また、炎症が契機ですので、吸入や炎症を抑えるお薬を使います。

なおらない場合は手術を選択することがあります。基本的にはラリンゴマイクロサージェリー(顕微鏡下の喉頭手術)でポリープを切除します。全身麻酔で手術用顕微鏡を使用し、のどを拡大して見ながらの手術です。成功率が高いものです。極く小さなポリープでは、外来にある内視鏡を使って、鉗除できることもあります。ちなみに術後は絶対沈黙を行う期間があります(沈黙療法)。期間は施設・医師の治療方針によりますが、概ね1週間と考えて下さい。

注意点

治療の基本はいかに声帯に負担をかけないようにするかです。

声を出さないのもひとつの案ですが、社会生活を営む上で声を出さないことは不可能ですので、正しい発声を心がけることが大切です。

炎症が契機になりますので、カゼをひかないようにすることも大切です。

手術後には音声は良くなりますが、同じ条件が揃えばやはり再発します。また、手術を行っても音声が改善しない、または増悪する可能性もありますので、主治医と十分な相談を行い、ご自分で慎重に検討なさった上で、手術を決断されることをお勧めします。

手術はあくまでリセットをかける行為であることをおぼえておいてください。ポリープを作らないようにするのは患者さん自身です。

鑑別疾患としてもっとも重要なのは喉頭癌です。通常は見ればほとんど判別できますが、まれにポリープの診断で切除し病理検査(細胞の検査)で癌の診断が下ることがあります。

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